タブレット、ノートパソコン、モニターなど、液晶ディスプレイを搭載したデバイスを持っていて、ディスプレイの一部の表示がおかしいドット抜けを経験したことがあるのではないでしょうか?
メーカーにドット抜けを不良品としてクレームを出しても交換してくれなく、納得いかない経験をしたことがあるのではないでしょうか?
今回は、液晶ディスプレイのドット抜けは、なぜ無くならないのかについて話をしていきたいと思います。
自己紹介
私の簡単な自己紹介をしておくと、半導体のエンジニアをしています。
今までに扱った製品としては液晶ディスプレイで、パネル設計
開発、製造プロセス開発をやってきた経験があります。
その他、品質管理、品質保証、生産管理といった幅広い業種を経験してきています。
ドット抜けとは
ドット抜けとは何か簡単に紹介します。
ドット抜けは画面の一部、粒状のドットが思う通りに表示されない液晶画面の欠陥のことです。
例えば、このような風景の映像を流しているのに一部分だけ違和感のわる色が表示されたり、黒くなってしまったりする現象です。
ドットが、真っ黒のままだったり、真っ白のままだったり、場合によっては黄色や赤表示されたままだったりします。
映像の一部分に違う色の点が残ると違和感がありますよね。
このような感じに表示される液晶ディスプレイの欠陥がドット抜けです。
ドット抜けを確かめる方法
自分が持っている液晶ディスプレイにドット抜けがあるかどうか確かめる方法を紹介します。
それはベタの映像を表示させて、違う色が表示されているところがあるかどうか確かめることです。
例えば白ベタの画像を表示させて全面真っ白のはずなのに、一部分だけ赤が表示されてしまう場合、それがドット抜けということになります。
白ベタだけでなくて、黒ベタ、赤ベタ、緑ベタ、青ベタを表示させて色がおかしいところが無いかチェックしてみてください。
RGBの組み合わせで、シアン、マゼンタ、イエローで表示させたときにだけドット抜けが出る場合もあるので気になる人はチェックしてみましょう。
ドット抜けはなぜ起きるのか
じゃあ、ドット抜けはなぜ起きるのかそれを説明していきます
原因は一つでは無いんですが、最も可能性が高い原因を紹介します。
ドット抜けの原因はとても微小なゴミが原因のことが多いです。
画像はJDIのサイトから引用しています。
液晶ディスプレイの構造はざっくり、光の元となるバックライト、液晶をコントロールするTFT層、液晶層、光の色を決めるカラーフィルター層があります。
バックライトから来た光はTFT層、液晶層、カラーフィルター層を通過します。
液晶をコントロールすることでカラーフィルター層を通過する光の量をコントロールして映像を表示する仕組みになっています。
液晶をコントロールする仕組みはTNとかIPSとかVAとかありますが、今回は割愛します。
液晶をコントロールするには液晶をTFT層とカラーフィルター層を挟み込む必要があります。
挟み込む段階で、小さなゴミが液晶層に入り込むと液晶がうまくコントロール出来ずに色がおかしくなるわけです。
こんな感じにドット抜けが出来てしまうわけです。
なぜドット抜けを防げないのか
じゃあ、ドット抜けを防ぐ発生源対策を考えてみましょう。
先程紹介したように、ドット抜けの主な原因はゴミです。
このゴミをゼロにすればドット抜けが無くなります。
しかし、液晶を作っている工場で膨大な初期投資と維持費を投じていますが、ダストをゼロにすることはできません。
なぜかというと、工場の中には様々な物を持ち込みます。
例えば、材料、工具、装置、ロボット、人間が工場の中に入ります。
もちろん工場の中ゴミを持ち込まないようにエアシャワーを浴びたり、拭き取りをしたり様々な対策をしていますが、完全にゼロにすることができないんです。
お金をかければあるていど減らすことはできますが、どんなに設備を増強していもゼロにすることは現実的には不可能なわけです。
スマホとモニターのドット抜け検査基準
ここで、製品ごとのドット抜けの検査基準について話していきます。
スマホのドット抜けは、まず無いと思っていいいです。
スマホの画面はノートパソコンなどのモニターに比べて小さいのでドット抜けが目立ちます。
わざわざ目立つドット抜けがある液晶を良品にすることはまずありません。
もしあったら不良品です。メーカーが不良品では無いと言い張るのでああれば、もうそのメーカーの製品は使わないようにしましょう。
パソコンのモニターのドット抜けは何個までといったメーカー独自の基準で決められています。
このように小さい画面ではドット抜けゼロがあたりまえ、大きい画面のモニターは何個までといった画面の大きさで基準が違う現実があります。
また、目立ちやすさも影響しています。
初期不良のドット抜け
ドット抜けには様々なタイプがあります。
初期不良のドット抜けについて話していきます。
初期不良のドット抜けは、買った直後に見られるドット抜けのことです。
この場合、最終出荷検査で合格と判定されたものや、目立ちにくい場所に見られるドット抜けが多いです。
この場合、検査基準はメーカー次第なので、もし初期不良のドット抜けが見つかった場合、メーカーに問い合わせましょう。
うまく交渉すれば交換に応じてくれる場合もあります。
経年劣化のドット抜け
もう一つは経年劣化のドット抜けです。
意外と知られていないみたいですが、使っているうちにドット抜けが発生してしまうことがあります。
液晶ディスプレイを買ってきた直後にドット抜けチェックをしたときは、ドット抜けは無かったのに数ヶ月、数年使っているうちにドット抜けが現れることがあります。
この場合、様々な原因が考えられますが、材料が不安定だったり、微小なゴミの影響だったりします。
たいてい、保証期間を過ぎたあとに現れることが多いので、保証が切れる前にドット抜けチェックをしておくことをおすすめします。
ドット抜け無しの製品を作る方法
じゃ、ドット抜け無しの製品を作る方法を考えてみましょう
一つはゴミが全く無いダストゼロ環境を作ることですが、地球上に出すとゼロ環境を作ることはほぼ、不可能です。
もちろん小部屋程度ならダストゼロにすることは可能ですが、液晶ディスプレイを作っている工場は、広大な敷地に建てられているため、それらを完全にゼロにすることは不可能です。
ドット抜け基準をゼロにする
もう一つのドット抜け無し製品を作る方法は、検査で検査基準をドット抜けゼロにする方法です。
液晶パネルは一枚のマザーガラスを適度なサイズにカットして使っています。
例えばスマホ用の液晶は一枚のマザーガラスから何枚も切り出します。
モニター用では画面が大きいので4枚取得するとします。
赤い点はダストだと思ってください。
一枚のマザーガラスに、ゴミがスマホ用、モニタ用で同じように分布しているとすると、スマホ用ではゴミが0個の基準にしても、ほとんどの部分が良品になるのに対して、モニター用では4分の1の部分しか良品になりません。
マザーガラスが一枚1万円だとすると
スマホ用では1枚あたり172円でできるのに、モニタ用では一枚1万円になってしまいます。
モニタ用でドット抜けの基準を1個までOKとした場合、4枚中2枚OKとなり、一枚あたり5千円になります。
ドット抜け2個までをOKとした場合、4枚中3枚OKとなり一枚あたり3333円になります。
このように検査基準を下げると一枚あたりのコストが下がる仕組みになっているわけです。
コスト、価格、儲けのバランスでドット抜けの基準を決めているわけです。
ここで、ドット抜けゼロにすると一枚あたりの単価が高くなってしまい、儲かりません。
っていうかそもそも高すぎてお客さんに買ってもらえません。
ドット抜け無し製品を買う方法
それでもドット抜け無しの液晶を買いたい場合
メーカー保証製品があります。
例えばDellやEIZOの一部製品ではドット抜け保証があります。
もし規定内のドット抜けがあれば、無料で交換してくれる保証プログラムです。
メーカーによってはドット抜けを保証してくれる製品があるので、これらのメーカーの製品を買うとドット抜け無し製品を買うことができます。
もちろん、ドット抜けはコストが上がるので他のメーカーより割高になってしまうことが多いです。
他にはショップ保証です。
自作パソコンを販売しているショップやネットショップでは自社で販売した液晶ディスプレイにドット抜け保証をしているところもあります。
この場合、ドット抜け無しの製品を買うわけではなくドット抜けの製品なら無償で交換してくれるよ、結果的にはドット抜け無しの製品が買えるということになります。
あとは、運試しの液晶ディスプレイガチャです。
最近はドット抜け無しを引く確率が昔より高くなってきているので割と引きやすいと思います。
ドット抜け製品を引いてしまったらヤフオクやメルカリで流して新しいディスプレイを買いましょう。
うまくいけば当たりを引けるかもしれません。
まとめ
ドット抜けの主な原因はダストです。
ダストをゼロにできないので絶対ドット抜けが無い製品を作ることはほぼ不可能です。
もしドット抜けゼロにするとコストアップになってしまうので価格が高くなってしまいます。
もしもドット抜けが嫌ならメーカー保証やショップ保証付きディスプレイの購入をおすすめします。
以上、なぜ液晶のドット抜けが無くならないのかの解説でした。
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